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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第19回
ハンドメイドにこだわるわけ
(2002年8月16日UP)

「こだわる」 という言葉を使いましたが、本当は別にこだわっているわけではありません(なんだそりゃ)
17回でも書きましたが、工場生産で大失敗をし、山のような在庫を抱えて途方にくれた経験から、個人の営業力では工場で商品を作っても、売りさばくことができないということがわかりました。
工場に依頼すると「最小ロット」、つまり最低これだけは作らないといけないという数(数百〜数千)が決まっていて、それより少ない数では作ってくれません。
商品がひとつだけではしょうがありませんから、5、6アイテム作るとなると膨大な在庫になるんです。 それをさばくのは無理ですよね。
で、ハンドメイドで作品を作るようになったんです。

もちろん小さい頃から絵を描いたり、何かを作ったりするのが好きだったということもあります。
ひとつひとつ手作りするとなると、量産はできません。 まわりからも「それじゃぁやっていけないよ」とよく言われました。 
確かに工場生産にくらべると、効率はよくないかもしれません。 しかし機械ではどうしても出せない「味」がありますよね。 それが好きなんです。どうしてもやめられないほど好きなんですよ。

私は工場で大量生産されたものも嫌いではありません。 そうしたものの中にもいいものはたくさんありますし、機械だからこそできることもありますからね。
でもすべてがカチッとした工場生産品だったら、人の手のぬくもりを感じさせないものばかりだったら、きっと生活は息苦しく感じるんじゃないかな。 私はそう思います。

手作り品だけというのも、今のライフスタイルではちょっと疲れるかもしれませんが、オーディオやPC、家電などの無機質なものと一緒に、人の手から生まれたものを置いてみると、なんとなく中和されるような気がします。

ではどうして手作りのものには、機械で作られた製品にない「味」が出るのでしょう。
それは正直にいいまして、私にはよくわかりません。 ただこんな経験をしたことがあります。
もうずいぶん前になりますが、ノートにデザインを描いていたんですね。 丸を描いていました。 できるだけまん丸になるように、何本も何本も線を入れていったんです。
そして我ながら丸く描けたと思って、何の気なしにそのノートをくるっとまわしてみたんです。 驚いたことに見る角度が違うといびつなんですね。 全然まん丸じゃないんですよ。
試しにコンパスで同じくらいの大きさの丸を描いて、自分の描いたものとくらべてみたら、正面から見た場合はそれほど違うようには見えないんですが、角度を変えるとコンパスの方はもちろん同じように丸いけれど、手描きの方はいびつに見えるんです。 不思議でしたね。
この時私はおぼろげに、手作りの「味」というのはこういうことなんじゃないかな、と思いました。

まん丸じゃなくても、正方形でなくてもいいんじゃないのかな、丸く見える、四角く見える、そういうことが大切なんじゃないのかなと思ったんですね。
私は小学校1年生の時に、担任の先生が「定規で絵を描くと絵が死んでしまう」とおっしゃったことが今でも忘れられません。 人の手で描かないと命が吹き込まれない、血がかよわない、ということでしょう。 それと同じなんじゃないかな。
まっすぐである必要はないんですよ、歪んでいたっていいんです。 要はその人の個性が出るかどうか、じゃないでしょうか。 もちろん売り物となると多少話は違ってくるでしょうが。

私の作るものはどれもこれもいびつです。きちんとしていません。 寸法の合っていないものもたくさんあります。
以前はどうかしてきちっとしたものを作ろうと、原型を作る時にはものすごく神経を使っていましたが、今はそんなことはありません。 全体のバランスを美しくまとめること、それを第一に考えて製作をしています。 もちろん基本的な技術を身に付けたからこそ、それができるようになったのだろうと思います。 どんなことでも基礎は大事ですからね。


今ネット上でも、それ以外のところでも手作りが流行っていますよね。
アクセサリー、ぬいぐるみ、洋服、バッグ、生活雑貨、いろんなものをみなさんお作りになっています。 でもたいていの方が作るものの種類が1つか、せいぜい2つくらいです。
でも私は考えているんですよ。 作るもののジャンルや手法にとらわれず、身のまわりの生活雑貨やインテリア雑貨は、なんでも自分で作ってしまう人が出てくるんじゃないかなって。 そういう人が出てきて欲しいと思っています。
 ひとつの素材を覚えると創作の幅が何倍も広がります。 「Howto」や「Let’s make!」が、みなさんの創作のお役に立ったら、それは有意義なことですよね。

私は焼物も、ガラス細工もやってみました。 どちらも大失敗でした(笑) 娘が生まれた時、ベビーカーのカバーをミシンで縫いました。 子供の部屋の棚や学習机も作りました。 どれもこれも下手ですがいいものです。 梅干し、たくあん、ベーコン、様々な料理、どれもすでに自己流で楽しんでいます。
焼物もガラスもあきらめたわけではありません。 今でもワクワクしています。 紙も漉いてみたいし、木工も覚えたい、縫製も勉強したい、竹炭も焼いてみたい、風力発電にも興味がある。 いずれは野菜も自分で育てよう、自然のこともまだまだ勉強不足だ。
そうして年をとったときには「何でもできるじじい」になっていたいと、割合本気で考えていたりするのです。

私にとってインテリア雑貨は、手作りの手始めといったものだったのかもしれません。 これから自分のこのちっぽけな手からどんなものが生まれてくるのか、実は私自身が一番楽しみにしているのですよ。 やってみたいことはいっぱいあります。ないのは時間だけ(笑)
(みなさんも丸を描いて、いろいろな角度から見てみてください。 おもしろいですよ)