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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第43回
「ネットショップの光と影」
(2003年8月19日UP)

今ハンドメイドを楽しんでいらっしゃる方の多くが、ネットショップに関心を抱いているのではないでしょうか? ネットが普及する以前は、自分のショップを持つなんて夢のまた夢でした。 しかし今ではやりようによっては、まったくお金を使わずに(PCや通信費は別として)、ネット上にショップを持つことができる世の中になりましたよね。
私自身ネットショップを始める前は、14年間ショップへの卸しをしていました。 かばんに商品のサンプルを入れて、営業をしていたわけですよ。 それが今ではネットショップのオーナーとなり、おかげ様で毎日たくさんの方に来ていただけるまでになりました。

ネットショップに関してまったく予備知識がなかった私ですが、今ではやってよかったと思っていますし、毎日がとても楽しいです。
距離に関係なく、日本中の方とメールや掲示板でお話ができたり、いろんな方と知り合えたり、また商売の面でも、日本中の方を相手に、リアルタイムで作品や様々な素材を販売できるようになりましたから、当然お客様の数も増えて、収入も安定してきましたね。
ひとりで営業して回れる地域などは本当に狭いものですから、こちらから出向くことなく、PCだけで、しかも日本中に情報を発信できるということは、あらゆる面で非常に大きな違いがあります。

ショップや問屋を通さないということは、中間マージンが掛からないということですから、当然これまでより値段を下げても収入が増えるわけです。 物価の高い日本で暮らしながら、こつこつ作品を作って売るには、どうしても中間マージンがない方が、あるいは少ない方がいいわけですよ。
収入が安定してくると、作品にもいい影響が出てきます。 お金に追われていますと、どうしてもデザインが消極的になってしまいがちですからね。
そういった意味でも、ネットショップで商売をする意義というのは大きいのです。

ネットには「検索」という非常に便利なシステムがあり、こちらからアピールするだけでなく、お客様がご自分で探してくださることもあるわけですね。 私のサイトへも毎日たくさんの方が、そうした検索サイトを通じてたどり着いてくださいます。 これは大きいですよ。 楽ができる、という意味でなく、「相方向」という意味でですよ。

それではいいことばかりなのかといいますと、実はそうではないです、世の中そんなに甘くはありませんからね。
ネットサーフィンをしていますと、素敵なサイト、ショップがとても華やかで、うらやましく感じます。 それで自分もあんなふうにネットショップをやってみたいと思うのですが、PCでショップを作る苦労はさておいて、いざ始めてみるとそうはうまくいかないのですよ。
ショップを作成している時は、一日でも早く公開したいと思います。 毎日PCに向かっているうちに、自分に対する客観性を失って、大勢の方が自分のネットショップを待っているような気がしてくるのです。 私はそうでした。
頭の中ではショップを公開したら、お客様へのメールの応対はこうしようですとか、掲示板へのカキコミに対する返事には、こんな感じで応えようですとか、注文が集中して対応できなくなったらどうしようですとか (私などはご丁寧にも、オーダーストップ用のトップページを作っていましたよ、バカですね)、とにかく千客万来のイメージしか湧かなくなってくるのです。 楽天的な私だけかもしれませんが・・・

さてようやくページを完成させて (たいていの場合は未完成のまま)、サーバーにアップして、ネット上に自分のショップができて、ワクワクしながら待っているのですが、メールは来ないし、掲示板へのカキコミはないし、アクセスカウンターは一向に増えない現実が待っているのです。 アクセスカウンターの数は、自分がページをのぞいた数だけだったり、掲示板にカキコミがあった!と喜んだら、わけのわからない宣伝だったりね・・・。
始める前の頭の中での空想がバラ色だけに、そのギャップがつらいんですよ。 もちろん冷静に考えれば、何十万とあるサイトの中から、始めたばかりのショップに来てくださるわはずがないんですよね。 しかしそうしたことを考える客観性を失ってしまうのですね。

自分があこがれたり、参考にしたショップさんのように、自分のショップもすぐにそうなると考えがちなんですね。 そうした人気サイトさんも、地道な運営の結果として、華やかでにぎやかなショップになった、ということまで気が回らないんですよ。 能天気な私だけかもしれませんが・・・
そうした寂しい日々が1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月と続いてくると、ネットショップを始めた自分を恨めしくなってきます(きました、私は)。 私の場合すべての商売的付き合いを破棄して始めただけに、それはそれは絶望的な毎日でしたよ。

もちろんその間も自分で考え、人からアドバイスをされて、少しでもいいショップにしようとする努力と、ひとりでも多くの方に知っていただくための工夫や、いろんな作業は続けていましたよ。 検索サイトに登録したり、ショッピングモールに出店したり、メルマガに宣伝を載せたりね。
寂しく不安な毎日を過ごしながら、ログを解析し、有効な宣伝方法や場所を探ししているうちに、一日のアクセス数が、10、20、30、40というふうに、本当に少しずつ、少しずつ増えていったわけなんです。
これが趣味のショップだったらやめてましたね。 生活がかかっていなかったら、私の場合続かなかったと思いますよ。 そんな地道な試行錯誤を繰り返して、半年後に一日の平均アクセス数が、ようやく 「50」になったんですよ。 半年かかって一日50アクセスです。 各都道府県から約お一人という計算ですよ。
私はネットに関してまったく知識がなかったので、宣伝の方法や、アクセス数を増やす方法など何も知りませんでしたから、余計に時間がかかったのでしょうね。 しかしその間にPCや、HTMLのタグの勉強ができましたから、今思うととても貴重な時間でした。

始めて半年くらいから徐々に注文が入りだして、メールでご感想ををいただいたり、掲示板にカキコミがされたりするようになりました。 初めてご注文をいただいた時の嬉しさは、いまだに忘れられませんね。 涙が出るほど嬉しかったですよぉ。
しかしそうして運営していくうちに、様々な問題が次々に降りかかってきましたね。 経済産業省からオーダーフォームの不備や、特定商取引法の表示義務の不備についてご指導をいただいたり (2回も)、CGIの設置方法が皆目理解できなかったり (今でも)、バックアップをとっていなかったために、OUTLOOKのアドレス帳のデータを失ったり、ウィルスに関する知識のなさに冷や汗をかいたりと、いろんなことを経験して、その都度それに対処するうちに、ネットショップを運営する上で必要な知識を、だんだんと身に付けていったわけなんです。

こう書きますと、さらっと簡単なことのようにお感じになるかもしれませんが、こういったことをひとつひとつクリアーしていくというのも、精神的に結構つらいものなのですよ。 なにしろ従業員は私ひとりですからね、作品を作り、荷物を梱包し、メールやカキコミへのお返事を書き、ページを更新し、ログを解析して次の宣伝を考えたりするだけでも大変なのに、次から次から問題が降りかかってくるんですから。 しかも身近にネットショップを持っている人なんかいないから、問題への対処の仕方も、自分で勉強しなければいけませんでしたしね。
PCが嫌いだった私には、そうしたひとつひとつのことがとてもつらかったですよ。 今はPC 好きですけどね。

私の場合ネットショップの運営というのは、最初は寂しさと不安と戦い、次いでネット上における様々な問題と戦い、その都度自力で勉強してきた日々そのものですね。
今ではありがたいことに、毎日数百人の方が来てくださるショップになりました。 しかし今でもネットショップを始めた当初と同じ努力を、日々繰り返していることには変わりありません。
ログを解析してCMを出すところを考えたり、ウィルス駆除ソフトやWindowsをまめにUpdateして、ウィルスに感染してお客様にご迷惑をおかけしないようにしたり、おいでくださる方に飽きられないようにページを更新したり、もちろん新しい作品のデザインを考えたりと、毎日がとても忙しいです。

ネットショップはとても楽しいです。 物作りを楽しんでいらっしゃる方、物作りで生きていこうと考えていらっしゃる方には、ぜひネットショップを始めていただきたいですね。 それほどおもしろく、しかもやる気と根気さえあれば食べていける手段です。 個人で物作りで食べていこうと思ったら、ネットショップ以外に道はないと思いますね。 物価の高い日本で、儲けの薄い物作りで食べていくのはとてもむずかしいことなのです。
ネットショップを専業とせずに、趣味や副業としておやりになるのはもっといいことですね。 趣味と実益を兼ねて、こんな楽しいことはないと思います。 もちろんやる気と根気があれば、の話ですけどね。

私は今では2年前の寂しさが嘘のように、毎日とても忙しく、そして楽しいですね。 労働基準法など個人商店には適用されません、毎日起きてから寝るまで、食事とお風呂の時間以外はず〜っと働きどおしです。
忙しいですし、これからもPCやネット、ウィルスの勉強をし続けなければいけませんし、からだがひとつでは足りず、ドラえもんがいて欲しいくらいですが、とても充実していて楽しいですよ。
この楽しさは、始めた当初の寂しさを知っているからだと思っています。 掲示板にカキコミもなく、メールも来なく、もちろん注文などまったくない、広い海にたった一人で浮かんでいるような、寂しく、不安な経験をしているからだと思っています。

今現在寂しい想い、不安な想いをされている方もいらっしゃるでしょう。 これからネットショップをやろうと、ワクワクしている方もいらっしゃるでしょう。
ネットショップは最初からうまくいくなんてことは決してありません。 かなりの努力と根気が必要です。 でもね、それさえあればこんなに楽しい仕事、趣味はありませんよ。
「私はここにいるよ! 私のところへ来て!」と発信し続けましょう。 寂しさに負けないで、だれも来てくれないと閉じこもらないで、自分からネットの世界に出て行きましょう。 そうすれば少しずつ少しずつ、必ず人との接点はできてきますよ。

PCを買って2年半、まったく知識のなかった私でもここまでになれました。 もちろん目標数値にはまだまだ達していませんが、やる気と根気さえあれば、ネットショップは必ず楽しめる世界だと、みなさんにも知っていただきたいですね。


次回は 「商業的デザインの敵は、自分の弱さ」と題しまして、物を作って売るためには、消極的になりがちな自分との戦いに勝つこと、自分自身を乗り越えていかないと、決していい作品は生まれず、その結果収入は増えず、結局は時間をロスしてしまうという、単純そうで実にむずかしい問題についての、私の考えをちょっと書いてみたいと思います。 お楽しみに!