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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第53回
「技術と作品の価値」
(2004年1月16日UP)

今回は技術力と作品の価値、つまり値段の関係について書いてみましょう。 といってもむずかしいことなど書いたりしませんし、書けと言われても書けません(笑) これはこれから作品を販売してみようかなぁとお考えの方や、今現在販売されている方にはぜひ読んでいただきたいと思いますし、趣味で物作りをされている方にも参考になると思いますよ。

作品の良し悪しを決める一番大きな要素は技術です。 アートの世界のことは私にはわかりません。 これはハンドメイド、物作り、職人の世界でのお話です。
やはりある程度の技術がなければ、お客様からお金をいただくことはできませんよね。 これはみなさんがショップで買い物をされる時のことをお考えになれば、よくわかると思います。 誰だってちゃちな作品や商品は欲しくないですものね。 お金を出すのであればよくできた作品や、自分では作れないような作品の方がいいでしょう。 そうした作品や商品を作るには当然技術が必要です。
それでは「技術=作品の価値」なのでしょうか? 残念ながらそれほど世の中は単純ではありません。 いくら技術があっても、デザインのよさや色彩感覚が作品に反映されていなければ、その作品にはあまり価値をつけられません。
これもわかりますよね。 いかに技術が優れていても、デザインがヘンであったり、色合いやコーディネイトがおかしければお客様は買いませんからね。 ですから作品売るためには技術はもちろんのこと、その他にもデザイン力、カラーコーディネイトのセンスが必要なのです。

ではそれが備わっていれば、あるいは身に付けたなら売れる作品を作ることができるでしょうか? ある程度売れる作品を作ることはできるでしょうね。 しかしそれでは大勢の作家さんの中に埋もれてしまいます。 人の作品より目立つためには「独自性」が不可欠ですね。 これがむずかしいんですよ。 前にも少し書きましたが、自分のスタイルを作り上げることのむずかしさは、おそらく実際に経験されなければおわかりにならないと思います。
この独自性があるかないかで、「趣味」と「商売」とに分かれると言っても過言ではないと思います。 独自性がなければ商売として成り立たないといってもいいほどです。 もちろんまったく売れないというわけではありませんが、それを正業や副業にすることはむずかしいでしょうね。 目立たないですから。 目立たなければ、ほかのショップや作家さんとの差別化もできませんからね。

つまり 「技術力」「デザイン性」「色彩センス」「独自性」、これらをすべてあわせ持つ作品が価値のある作品であり、お客様からお金をいただくことができる作品なのです。
よく趣味から商売を始めた方でお間違えになるのは、「材料費」や「制作時間」=「値段」だと思っていらっしゃるところですね。 これは一面そのとおりですが、実際にはこうした考え方はお客様には通用しないのです。
いくらいい材料を使っても、いくら制作に時間を費やしても、上に書いた4つの要素がひとつでも欠けていれば、その作品には価値はないのです。 つまり売れないのです。
極端なことをいえば、たとえ安い材料を使って短時間で作った作品でも、4つの要素が備わっていれば売れるのですよ。 こうした経験は私自身何度もあります。 作家さんであればきっと同じ経験をされていることと思います。
私の作品にも制作を始めてから販売まで1年以上もかかり、自分ではかなり自信をもって売り出した作品が全然売れなかったり、いい材料をふんだんに使ったにも関わらず、ほとんどそのことが評価されなかったり、そうかと思うと逆に、わずか2日で作った作品が大ヒットした、なんてことがありましたね。
4つの要素が一つでも欠ければ、どんなに苦労した作品でも売れませんし、要素が備わっていれば苦労しなくても売れるのです。

おそらく商売における一番のむずかしさはここにあるのでしょうね。 作っているときに意識して4つの要素を作品に盛り込める人がいたとしたら、その人は天才でしょうね。 いやそれ以上でしょう。 世の中には天才と呼ばれた人たちがいますが、その人たちの作品のすべてが素晴らしいなどということは、決してありませんよね。 やはり凡作や駄作もあるものです。
ですから私のように、それほど才能に恵まれていない作家は人一倍苦労しましたし、失敗作も多いのですよ。 費やした時間が作品の価値であれば楽なんですが、それほど甘くはありませんね。

人の作品の良し悪しを判断することはたいていの人にできることですが、しかし今自分が作っている物を客観的に見て、そうした売れるための要素を作品に入れていくことは、非常に困難なことです。
でも悲しいことに出来上がってしばらく時間が経つと、その作品の良し悪しが自分でもわかってくるのです。 作っているときにはわからないのにね。
作家としての経験の浅い頃は、出来上がった自分の作品を客観的に見ることができませんでしたが、だんだん経験を重ねるうちにそれができるようになってきます。 出来上がった作品の良し悪しがわかったところで、がっかりするだけだと思われるかもしれませんが、それを次の作品に活かすことはできるわけですね。 「今度作るときはここを気をつけよう」といった具合にですね。
ではどういう経験を重ねれば、自分の作品の価値を客観的に見ることができるようになるかといいますと、それはショップなどに営業に行って叩かれたり、けなされたり、ほめられたりした経験の積み重ねなんですね。 これが自分にとって一番の薬になるのですね。 もっともネットショップでは営業に回ることもないわけで、そういった意味では自己満足に陥る危険が大きいといえるでしょうね。

客観性を身に付けるには人の意見を聞くことです。 親しいお友達やご家族の意見はあまり参考にはなりません。 遠慮がありますからね。 しかし商売となりますとシビアですから、ダメな物ははっきりと「ダメだ」と言われます。 そうした厳しい意見を聞いて、それを自分のものにするんですね。 次に作品を作るときにその意見を取り入れれば、それだけ作品の価値は上がるのです。
だれだって自分の作品を批判されるのは楽しいことではありませんが、もしあなたが商売としてやっていくのであれば、そうした現実の厳しさから逃げてはいけませんよね。
私自身泣きたいほどくやしいこと、悲しいことがたくさんたくさんありましたよ。 でもそれにくじけないで、それをすべて自分の糧にしてきました。 そのことが今の自分を作ったと思っています。

また、自分の作品を客観的に見る訓練をするのと同時に、人の作品のいいところ、悪いところを見つけて、自分ならどうするか、自分ならどんなふうに仕上げるかを考える癖をつけることですね。 それによって作品にお客様の視点を、取り入れることができるようになっていきます。 つまりそれが「デザイン性」と「色彩センス」を作品に盛り込み、さらに「独自性」を身に付けることになるのです。
もちろん先ほども書きましたとおり完璧にはできませんが、お客様の感性や世の中の好みに会わせることが、少しずつですができるようになっていくのですね。
こうした努力なしに売れる作品を作ることはできません。 現在活躍をされている作家さんは、こうした努力を人知れず続けてきた方々なのです。

自分の作った物が人に評価されて売れるということは、この上もないほど嬉しいことです。 それこそ飛び上がりたいほど嬉しいです。 その気持ちは今でも同じです。
なぜそんなに嬉しいのでしょう? それはつまりそれほど世の中に出て、商売をすることが厳しいからです。 お客様に気に入っていただける作品を作ることがむずかしいからです。 厳しくむずかしいからこそ、自分が評価されたことをとても嬉しく感じるのですね。 自分がこの世に生きているあかしを身をもって感じることができる、と言うと少しおおげさかもしれませんが、少なくとも自分が 「必要とされている」ことを感じるのですね。 その喜びがあるからこそ物作りが楽しく、やめられない理由だと思います。

「厳しい、むずかしい」などとみなさんを不安にさせるようで申し訳ありませんが、私はひとりでも多くの方に世の中に出ていただいて、生きがいをもってほしいと思っています。 性別や年齢、経験に関係なく、物作りでどんどんご自分をアピールしてください。 趣味であれ商売であれ、もしあなたに自分の作品をよりよくしよう、そのためには努力を惜しまないというお気持ちがあれば、きっと素晴らしい作品ができるでしょうし、あなた自身有意義な体験をすることができるはずですよ。
人に批判されることを恐れず、くしけないで、物作りをご自分のために活かしてくださいね。