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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第14回
「雑誌とショップ、メーカーの関係」
(2002年6月1日UP)

今回の内容については書くべきか書かない方がいいか、以前から悩んでいたことなんです。 お客さんにとってこういうことは知らない方が幸せなのでは、そう思わないでもない、そんな内容なのですよ。
しかし私のこのサイトまでたどり着いてくださった方なら、きっと正しく受け止めて理解してくださるだろうと思い、今回書くことにしました。
お読みいただいたあとで驚いたり、憤りを感じたり、あるいは失望したりするかもしれません。 しかしあらかじめ申し上げておきますが、これは以前の話、しかも一部のショップやメーカーのことですので、業界全体を誹謗するものではありません。 では、はじめますね。

このページでも何度か書きましたが、私が雑貨ショップに勤めていた15年以上前に「雑貨ブーム」と呼ばれて雑貨が注目され、ファッションの一部に定着した、という時期がありました。 今のように雑貨や雑貨ショップがごく普通の存在になる前、あるいはなりはじめた頃のことです。

当時どこの雑誌社でも雑貨を特集したり、新商品、売れ筋商品を紹介したりすることに躍起になっていました。 しかし雑誌社のスタイリストさんたちにはどれが新しいもので、どれが売れているものなのか、これから売れるものなのかわからなかったのです。 今の方はスタイリストさんにわからないなんてと、不思議に思うかもしれませんが、まだ業界がはじまったばかりのことですから、それは無理もないことなのですね。
スタイリストさんにはこれまでの商品の流れ、つまりどんなものが流行ってどんなものがすたれ、どんなものがそれに代わって売れ出したか、という知識がありませんでした。 ですからすべてショップやメーカーがたよりだったんです。

大きなバックを持ってスタイリストさんたちはショップやメーカーに足を運び、「これが売れてるよ」「次はこれが売れるよ」といわれた商品をレンタルして持ち帰り、撮影をして雑誌に載せるのです。
しかしここにひとつの問題があったのです。 それは取材、撮影から雑誌の発売までに時間がかかるということです。 早いもので1ヶ月、遅いものでは3ヶ月もあいだがあいてしまうのです。
その当時の雑貨はとにかく次から次へと流行が変わり、商品の寿命もとても短かったのですね。 売れる時期が過ぎるとまるで風がやんだように、パッタリと売れなくなってしまうのです。 ですからメーカーもショップもさっと売り切って、次の商品に入れ替えるということに一番神経を使っていました。

そういったわけで1ヶ月、あるいは2、3ヶ月先に紹介されることが、かえって負担になることもあったのですよ。
スタイリストさんたちは必ず 「この商品は発売日に、ある程度の数を確保しておいてもらえますか?」 と聞きます。 紹介してもらう側はそういわれたら売り切ってしまいたいにもかかわらず、雑誌のために取っておかなくてはいけなくなるのですね。 雑誌で紹介されてお客さんが買いにきてくれればいいけれど、それは別に保証されるわけではありませんから、取っておいたものが売れなくて、結局デットストックになってしまうというリスクも多々あったわけなんです。

それにショップにしてみれば雑誌を見て買いに来るお客さんよりも、いつもお店に来てくれる常連さんたちを優先させたいという気持ちがありますから、雑誌の発売日前に完売してしまい、雑誌を見て買いに来たお客さんには「あっという間に売り切れちゃった」と、言い訳をするなんてこともよくあったのです。
紹介してもらうのはいいが、リスクを背負ってまで売れる商品を取っておきたくない。それが本音だったんですね。

そんな背景があったので、そのうちにその雑誌社との関係を逆手にとるメーカーやショップも出はじめました。 どういうことかといいますと、ここが書きにくいところなんですが、全然売れなくてデッドストックになっている商品、つまり持て余している商品を「売れ筋」とスタイリストさんにうそをついて雑誌に載せさせて、あわよくば在庫処理をしようとしたのです。
正直にいいますと、こうしたことは珍しいことではありませんでした。 新商品、売れている商品と紹介されているものの中には、そんな「在庫処理商品」がよくありました。
私はそれをすべて非難するつもりはありません。 あくまでも商売ですからやむを得ないこともありますし、商品の勉強をしようとしないで、ただカッコだけつけているスタイリストも多かったですから、自業自得だという側面もありましたから。

私はショップに勤めているという商売上、雑誌には必ず目をとおしていました。 見ればわかるんです、ああこれは在庫処分だなってね。 からかい半分に電話などで話を聞くと案の定です。 「どぉ?在庫ハケた?」 「おかげさんですごい引き合いで、追加しようかと思って。クマちゃんとこでもやらない?売れるよ」 お客さんをバカにするのもいいかげんにしろ、だれがそんなもんやるか、そう思うことも度々でしたよ。 陳腐な表現ですが、「おごる平家も久しからず」 いつか必ずしっぺ返しがあるぞ、と思っていましたね。
事実そうした不誠実なメーカーやショップはバブルの崩壊とともに消えていきました。

私がオーダーメイドで商品を作る道を模索したのも、そんな経験が要因となっていたのかもしれません。 「商売はだましあいだ。だまされる方が悪いんだ。綺麗ごとだけではやっていけないよ」 そううそぶく人たちへの反発だったのかもしれません。

今は雑貨が生活の中でも市場でも普通のものになりましたから、以前にくらべて定番にして売ろうという姿勢が強くなったように思います。 しかし今でも雑誌が発売されるまでに、時間がかかることには変わりがありません。
どうかみなさんは雑誌やショップのコメントに惑わされずに、ご自分の目で素敵な雑貨を選んでくださいね。