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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第22回
「作品が生まれるまで(私の場合)」
(2002年10月1日UP)

今回は私の作品がどのような工程を経て完成するのか、について書いてみましょう。 あくまでも私の場合ですから、おそらくは参考にならないと思いますが。

クリエイター向けのメールマガジン 「 zekt 」でのインタビューにもありますが、私はデザインの才能にあまり恵まれていません。 まったくないとは思いませんが、あふれるような才能はありませんね。 卑下するわけでなく、本当です。
ですからデザインを考えるのは苦手ですね。

私は新作を作ろうと、デザイン帳に向かうことはありません。 向かっても何も頭から出てきませんから。
ではどうするのか。 それは頭のデザインを考える回路を、いつでも一本つないでおくのです。 わかりにくいと思いますが、そうとしか説明できません。
そうすると何かを見た拍子に、ふっと形が浮かぶことがあるのです。 それはテレビを見ているときであったり、散歩中に花を見たときであったり、景色を眺めている時であったり、スーパーで買い物をしているときであったり、見たものに触発されて形が浮かぶこともあれば、何の脈絡もなくイメージが湧いたりすることもあるのです。

頭に浮かんだ形は全体ではなく、ほんの一部であることがほとんどですから、それから何ができるかを考えるのです。
もちろんすぐには思いつきません。 ですから忘れないうちにデザイン帳にメモしておくのですね。
その時点ではただの漠然とした線にすぎません。 こうして描いた線がその後作品に発展することは20〜30にひとつあるかないかですね。 たいていは描いた時に消してしまいます。 つまらなくて。

これは、と見込みのありそうな線、形を見ていて、全体像が浮かぶこともありますが、ほとんどの場合そのままおいておいて、次の発想が浮かぶのを待つのです。 待っているというのは、頭のすみにいつもその線なり、形なりを入れておくんですね。
そうするとまた何かをきっかけにして、その線や形がひとつのデザインに発展することがあるのです。
いつデザインに発展するかはわかりません。 そのまま忘れてしまうことが多いんですけどね。 
才能に恵まれていない、ということがおわかりいただけると思います(笑)

そうして幸運にもひとつのデザインに発展したら、それをまたデザイン帳に描いてみます。
情けないことに描いてみたらつまらなかったと、この時点で消してしまうことが多いです。 それでもなんとか商品になりそうなデザインにしていきます。 オブジェではありませんから、時計にするにせよ、鏡にするにせよいろいろな制約があります。 それを考慮しながらバランスをとったり、見た目に美しい線を加えたり、そんな作業を繰り返してどうやら作品らしくなっていきます。

こうしてほぼデザインは完成するわけですが、それが実際に作品として世に出ることはあまりありません。 やっぱり作品としてつまらないことが多いのです・・・。 もうホントにイヤになりますよ、才能なくて。
また仮に気に入ったデザインができたとしても、すぐには作り出さずに、客観的に見られるようになるまで、そのまましばらくおいておきます。 ( あぁ、なんと時間のかかることか)

客観的に見られるようになったら、少しずつ手直しをして、おおよそのサイズを決めます。
紙に描いてみてちょうどいいと思う大きさより、5パーセントくらい小さめにします。 これはなぜかといいますと、立体になると多少大きく見えるので、それを考慮して小さめにするのですよ。
さぁ、これでようやく製作開始です。 ( この時点では色などはほとんど決めていません) 

ところが私は手先が不器用なので、原形の製作が非常に非常に苦手なんですよ。 ガレージキットなんかをやっていらっしゃる方が心底うらやましいですね。 フィギアーとか、なんであんなにきれいに作れるんだろうって思ってしまいますよ。 ねたましいです。

私は原形を石膏か、石膏粘土で作ることが多いですね。 作りながらそこでもまた少しずつデザインを変えていきます。
下手ですから時間もかかります。 数週間から数ヶ月かかってしまいます。 これまた情けない。
形が完成したら細かいキズやへこみを粘土やパテで直していきます。 キズやへこみを見つけるために、銀色のラッカーを吹き付けています。 銀色はわずかなキズ、へこみも目立ちますから、わかりやすいのですよ。
全体がきれいになったら、クリアーラッカーでツヤを出して原形の完成です。

さて原形の型をシリコンで取ります。 これまた胃の痛くなる作業で、型取りを失敗すると原形をダメにしてしまうことがありますから、何年やっていても緊張します。
シリコン型が完成したら、半日天日に当てて養生します。 こうすると離型性が高くなるのですよ、理由はよくわかりませんが。

いよいよレジンを流し入れて成型します。 もちろんすぐに作品を製作するわけではなく、カラーテストです。 つまりその作品に合う色を見つけ出す作業ですね。
透明エポキシレジン製の作品の場合、レジンの硬化時間が長いですから、この作業に時間がかかります。 すぐに色が決まることはまずありませんから、10個、20個とゴミ箱へと消えていきます。
ポリウレタンレジンはたいてい着色しますから、それほどむずかしくはありませんが、それでもやはり何パターンも作ってみますね。
もちろんそれは売り物にはしませんよ。 気に入ったものは自宅用にしたり、友人にあげたりしちゃっています。

最終的な工程として、強度を調べるということがあります。 つまり日常に使って簡単に壊れたりしないか、時間が経って不都合なことはおきないか、運送に耐えられるか、といったことをいろいろな角度から調べるわけですね。
たいていはこれまでの経験から大丈夫かどうかわかりますが、床に落としてみるのが一番わかりやすいですね。
デザイン的にまったく問題のないものもありますが、デリケートなものだと壊れることもあります。
その壊れ方を見て、商品として通用するかどうかを見極めるわけですね。 もちろん作る段階で壊れにくいような構造にはしてありますが、やはり実際に試してみないと安心して売ることができないんです。

そうした作業を経て、これならお客様に売ることができる、という自信がついて初めて公開します。
まったく才能がないと、時間もお金も余計にかかりますね。
もっと才能があったらなぁ〜、いつもそう思っています。 しかし人をうらやんでばかりいてもしょうがないですからね、ヘタならヘタなりに、時間をかけて丁寧に作るしかないですから。
今年の正月に、目標として 「毎月新作を作る」 と、高らかに宣言してしまったが、まぁ無理な話でしたね、私には。 地道にこつこつとやっていきますよ。ハハハ