Vol,14〜Vol,59
(14以前は保存してありません)
|
第32回
「どうしてインテリア雑貨を作る人が少ないんだろう?」
(2003年3月1日UP) |
今から10年以上前のことですが、私が好きだった雑貨メーカーの社長と話をしていて、「どうして時計や鏡、照明なんかを作らないんですか?」とたずねたことがあります。 社長の答えは「むずかしいから」でした。
その時私はすでに時計を作っていたので、その理由が不思議に思えましたね。 どうして、何がむずかしいのだろう?と。
まさか組み立てることができない、というわけではないでしょう、量産するための工場を探すのがむずかしいというのでしょうかね? その時はよくわかりませんでした。
その後も時計などのインテリア雑貨を作る人にはほとんど会いませんでした。 たしかに向き不向きはあるでしょうけれど、私には「むずかしい」という先入観のためのような気がします。 それほどむずかしいことではないんですよ。
時計だけでなく鏡も照明もただ組み立てたり、取り付けたりするだけですからね。 ただ私が感じるのは、時計は1から12までの数字が丸く並んでいる、鏡は全体が丸くてスタンドがある、照明にはシェードがある、という既成概念が、自由な発想を邪魔をしているのでは?ということですね。
私は最初からそうした概念にとらわれることなくデザインをしました。 といいますか時計や鏡にする前にデザインがあり、そのデザインからどんなものが作れるか、という風に作品を作っていました。
つまり思いついた線をノートに描き、それを眺めて「さてこれは時計にしようか、はたまた鏡の方がいいか」と考えて、デザインを完成させていくわけですね。 今はそうした作業に慣れて、最初から時計なら時計、鏡なら鏡を作るつもりでデザインを考えますけどね。
この既成概念にとらわれないということが一番のコツだと思っています。 時計に数字はいらない、鏡は丸くなくてもいい、照明にシェードがあろうとなかろうとどっちでもいい、といった具合にですね。
こうした既成概念にとらわれると、かえってデザインすることがむずかしくなります。 結局はごく普通のありきたりなものになってしまうのです。 たとえば文字盤の数字をちょっと工夫したり、シェードの素材に変わったものを使ってみたりね。 一見すると奇抜なようでも、それは単に奇をてらっただけで、だれでも思いつくことなんですよね。
そうした奇をてらったデザインは飽きられやすいですし、次に作るものも同じパターンになることが多いですね。 そうなるとそこから抜け出すのは大変です。
しかし既成概念をとりはらえばデザインは簡単ですよ。 なぜならどんなものでも時計、鏡、照明にすることができますからね。 もちろんそれがいい作品であるかどうかは別ですが。
時計の場合、ムーヴメントを金具のネジでとめるタイプであれば、ネジがとどく程度の文字盤の厚さで、時分針の回るスペースがあればそれでいいわけですし、はめ込むタイプであれば、はめ込むための穴が開いていればいいのであり、鏡は鏡の直径だけの平らなスペースがあればいいのです。 照明にいたっては火事にならなければなんでもいいんですから、実に簡単なもんですよ。
ダンボールに鉛筆で穴をあけてムーヴメントをつけ、針をつければ時計ですから。 そんな風に考えると、なんでもインテリア雑貨にできるということがわかってくるはずですよ。
むずかしく考えれば息をすることでさえむずかしく思えてきますから、気楽になんでも作ってみることですね。
それでは次にアイテム別にちょっとしたコツをご紹介しましょう。 などといいましても単純なことですけどね。
まずは時計から。 第一に時計を作る場合に気を付けることは、横から見て時分針が本体よりも前に出ないこと。 なぜなら使っていて針が曲がりやすいから。
販売をされるのであれば、これは重要なことになりますよ。 針が本体よりも後ろであれば、梱包しても針が曲がる危険は少なくなります。 もちろんアクリルやガラスのカバーをつけるのであればまったく問題ありませんが。 私はカバーをつけるのがあまり好きではないので、こういうことに気を付けているわけなんですね。
第二に、これはムーヴメントを金具のネジで絞める際の注意点ですが、きつくネジを締めたつもりでも、必ずあとでゴムパッキンがゆるんできますから、そうならないために最後にネジの方を回して絞めるのではなく、ムーヴメントの方を回してきつく絞めます。 こうすればあとでゆるんでくることはありません。 ムーヴメントがちょうどまっすぐになるように絞めるには、ちょっとコツがいりますが、何回も絞めなおせばいいのですから、それほどむずかしいことでも、面倒なことでもないと思いますよ
次に鏡ですが、本体がどんな素材であれ、直接接着するのではなく、本体にまず厚手の布かフェルトを鏡より小さい形に切って接着し、その生地に鏡を接着します。
なぜそうした方がいいのかといいますと、接着剤は時間が経つと収縮してきますから、本体に直接接着しますと、その収縮の力によって、鏡面にわずかですが歪みが生じて、映るものがゆがんでしまうことがあるからなんですよ。
しかしこうして布を間に挟むとそれがクッションになって、接着剤によるゆがみをほとんど出なくすることができるわけですね。 それだけでなく接着力が強くなって、鏡が本体から取れにくくなります。
次に照明です。 これは当然のことですが、電球とシェードの間をあけるということですね。 私は電球の大きさと形もデザインの一部だと思っていますから、作品に合った電球を付けることにしています。 以上(笑)
そして私の苦手なフレーム、写真立てですが、まずなぜむずかしいかということをご説明しておきましょう。
フレームの主役はあくまでも飾る写真やカードですから、その枠が目立ってしまってはなんにもなりませんよね。 といってあまりに地味であったり殺風景であっては、作品として作る意味がないですからね。 つまりはそのバランスがむずかしいのですね。 それ以外は特にむずかしいものではありません。
しかしこれはあくまでも 「私」の話ですから、みなさんはそれぞれにお好きなようにお作りなればいいと思いますよ。
最後に小物入れやジュエリーケースについて、です。
これらの作品を作る場合に気を付けたいのは、あまりゴテゴテと飾りを付けないことですね。 シンプルな方がしまうものが引き立つと私は考えています。 たとえしまえば見えなくなるとしても、装飾があまりに華美ですと、開けた時、出した時に、せっかくのアクセサリーやお気に入りのものがみすぼらしく見えてしまうと思うのですね、私は。
もちろんこれも私個人の考えですから、ゴージャスが好きとおっしゃる方はいっぱい飾ればいいと思います。
おそらく趣味で時計を造ったり、鏡を作ったりされている方は結構いらっしゃると思いますが、販売目的で作っていらっしゃる方は、まだまだ少ないでしょう。 といいますと、これだけネットショップが増え続けている昨今、他のショップとの差別化という点でも、インテリア雑貨をお作りになることはとても有効だと思いますし、ご自分の創作の幅、商品構成の幅を広げることにもなりますから、私としましてはぜひお薦めするわけなんです。
それにもうひとつインテリア雑貨の得なところがあるんですよ。 私はインテリア雑貨はオブジェに機能を付けたものだと考えています。
オブジェというのは売りにくいですし、実際にあまり売れるものではないのですが、それに時計ですとか、鏡、照明、言葉といった付加価値を付けると格段に売りやすくなるんですよ。 お客様も同じ飾るものであれば、「使えるもの」の方が買いやすいのではないですか? 私はそう考えたんですよ。 そしてそれは間違いではなかったんです。
どんな作品をお作りになるにしても、そのものの大小に関わらず、手間がかかることは同じです。 それなら目立つもの、売りやすいものにした方が、販売することを考えた場合に徳だと思うんですよ。
趣味でお作りになるにしても、人とちょっと違うものを作れた方が、楽しさは大きいのではないでしょうか? 手間と技術的なむずかしさは、アクセサリーもインテリア雑貨も同じなんですからね。
大きいからむずかしいような気がするかもしれませんが、それが先入観なんですよ。 同じなんです、大きさが変わっても。
ビーズでもステンシルでもあみぐるみでも、ドライフラワーでも縫製でもフィギアーでも、なんでもインテリア雑貨にすることができるんですよ。 ようは既成の概念を取り除くことです。 そうすればあなたの創作の世界はもっともっと広がりますよ! |
|