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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第34回
「自作品を売り歩いた日々」
(2003年4月1日UP)

最初にお断りしておきますが、私は自分のことを「芸術家」「アーティスト」だとは思っていません。 どちらかというと「職人」だと思っていますし、そう言ってきました。
今でこそネットショップのオーナーですが、つい2年ちょっと前までは、自作品をショップに売り歩いていました。 つまり 「営業」ですね。
私の身近にも芸術家さんがいますが、私のやってきたこと、売り方とはずいぶん違うようです。 私はあくまでも実用的な小物として売ってきましたから。

今回は自作品を売り歩いた15年間に経験したことや、感じたこと、考えたことなどを書いてみましょう。 ご自分の作品を売り歩いていらっしゃる方、これからそうしようと考えていらっしゃる方々に、少しでも参考になれば、と思っています。 ならないかもしれないけど・・・

私は雑貨屋の店員出身ですから、売り方も雑貨と同じように(最初は雑貨でしたし)、大きなカバンにサンプルを入れて、ショップやショップを経営している会社に営業に行きました。
相対的にみて、物作りをする人は営業が苦手なようですが、ご多分に漏れず私も苦手でしたし、まぁはっきり言って大っ嫌いでした(笑)
芸術家ではありませんから、作品を見せて 「この作品のコンセプトは」ですとか、「これは○○を表現している」などということは言いません。 ただ見ていただいて、気に入っていただければ納品、気に入られなければそれまで、です。

ある方に 「デザインを考える人間は営業と経理をしてはいけない。 なぜならそれを兼務すると自信がなくなったり、作るものがせこくなるから」と、言われたことがありますが、それがすべてではないですが、ある程度そのとおりだと思いますね。 たしかに自信を持ちにくいですし、作るものが消極的になりがちです。
しかし私のように一人でやっていると、やらないわけにはいきませんから、「いやだなぁ・・・」と思いながらも電車に乗って行くわけですよ。 あっちこっちへね。

店長さんが商品にくわしい方ならいいんですが、そんなショップは意外と少ないですし、作品を見せても 「いいのか悪いのか わからない」なんて店長さんも多いし、大きな会社では大学を出たてで、なんの経験も知識もない人が担当者だったりして、営業は簡単ではありませんでしたよ。
駅の立ち食いで、カレーライスなんかを食べているときが、唯一ホッと息をつける時間だったりして。
担当者に待たされたり、「こんなヤツになにがわかる!」という人間に頭を下げたり、鼻であしらわれたり、バカにされたり、う〜〜〜ん、なんだかいい想い出がないなぁ。 それを考えると今はまさに天国ですね。 ネットが普及して本当によかった!

作品を卸すショップは当然一店ではありません。 ですからショップのタイプが少しずつ違うわけですね。 全部同じタイプのショップばかりでしたら営業も、それから作品作りも楽なんですよ。 どのショップにも同じ物がハマるわけですからね。
ですが現実はそうはいきません。 こっちのショップには気に入られるけれど、こっちのショップにはハマらない、なんてことがありますから、と言いますか、すべてがそうでしたね。 ですから何を作ったらいいのか、どんなものを作ったらいいのか、最後の頃は本当にわからなくなりましたよ。

全国で展開できれば、同じようなタイプのショップだけに卸す、ということができるのでしょうけれど、個人ではそれはまったく無理なこと。 ではどうしたらいいのか? それを考え続けた15年間だったと言ってもいいですね。
で、出た答えがネットショップだったんです。 もうこれしかない、そう思ってすべての付き合いを絶ち切って、ネットショップに転向したんです。 

芸術家さんのように、ひとつ売って何万、何十万なんて物を売るんじゃないんです。 薄利多売の言葉どおり、何十個、何百個も売らなければいけないんですから、どだいひとりで営業をまわるには限界があるんですよ。
では芸術家になれば楽に儲けられるかといいますと、現実はそんなに甘くありません。 芸術家という肩書きだけで食べていける人なんて、ほんの一握りですし、それが必ずしもいい人生だとは私は思いません。 少なくとも私は御免ですね。 私は自分を世の中に押しつけるのではなく、あくまでも個々のお客様と接したいと考えていますから。

ではショップに卸して、営業をして歩くのは無意味なのか? やめた方がいいのか?といいますと、そうでもないですね。 できるならショップへの卸しはした方がいいですよ。 自分にその気があれば勉強にもなりますからね。
お客様の感覚とずれないためにも、現場の人たちの意見を聞くためにも、卸しはした方がいいと思っています。
しかし前に書きましたとおり、それだけでは食べていけませんし、結局は自分を失うことにもなりかねませんから、同時にネットショップも運営するんですよ。 どちらの売上げが多い方がいいのかは、あまり関係ないと思いますが、 両方やった方がいいことは間違いありません。
ただしあまりショップとの付き合い多くなりますと、営業にまわるのに時間をとられて、作品を作る暇がなくなりますから、作品作りに支障のない程度の数のショップへ卸すことをお薦めしますよ。
ショップとの付き合いは、あくまでもお客様の意見を聞くための勉強だと、割り切ってお考えになった方がいいでしょうね。

私は卸しからネットショップに転向しましたから、お客様の心理がある程度わかります。 しかしネットショップから始められた方には、それはちょっとわかりにくいと思いますね。
趣味程度におやりになるのでしたらいいのですが、それでちゃんと収入を得よう、生活をしていこうとお思いでしたら、思い切ってショップへ飛び込んでみましょう。
まず相手にされません。 ですが自分のためですから、簡単にあきらめないで何度も何度も作品を見せましょう。 断られても簡単に帰ってこないで、ショップの方、できれば店長さんとお話をしましょう。 自分をアピールするのではなく、どういう作品ならやってもらえるのか、どういう商品が今必要なのか、そういったことを聞きましょう。 (注:ショップの店長さんはプライドの高い人が多いですから、自分の作品を強くアピールすることは逆効果ですよ)

ネットショップを運営されていらっしゃる場合は、それは黙っていた方がいいです。 ウソをつくようですが、ネットショップをやっていると言えば、断られる可能性が高くなりますからね。
逆に卸しだけでネットショップをお持ちでない方、ぜひ始めましょう! PCの経験がまったくなかった私でも、こうしてなんとかやっているんですから、あなたにやれないことはありませんよ。 
ネットはいいですよ、日本中にリアルタイムで作品を紹介できるんですからね。 しかも営業に行く時間のロスもなく、交通費もかかりません(笑)
はっきりいいまして運営はとても大変ですが、ショップへ卸すよりも何倍も何十倍も楽しいですよ。  中間マージンがない分経営もしやすくなりますし、なによりもお客様と直接接することができることがいいですね。 もちろんメールでですが、お客様のお好みの色でお作りしたり、メールのやりとりで作品の色を決めたり、「こんなアイテムを作って欲しい!」なんてご希望をいただいたり、今までしたくてもできなかったことができるんですから、こんな楽しいことはありませんね。

日本では芸術家は育ちにくいです。 そういう土壌なんです、日本は。 薄利多売でやっていくのは、大変そうに思えるかもしれませんが、結局は職人の方がまだしも安定しています。
もちろんそれとても今の日本ではむずかしいには違いありません。 デフレで高い値段のものは売れませんしね。 100円ショップなんてものもありますし。 手作り品というものはある意味では贅沢品ですから、こういうご時世にはつらいことはつらいんですが、それでも私はこうして生きています(笑)

どんな業種でも製造業は儲かりません。 結局はそれを流通させる連中に利を取られてしまいます。 前回書きましたとおり、私は店長の経験がありますからよく知っています。 ですからネットショップをお薦めするんですよ。
ショップももちろん大変ですが、労力からいえば作る方がもっともっと大変なんです。 我々だって正当な利益を得てもいいはずです。 ショップに頼ることなく、自分の力で自作品をお客様にじかに提供しましょうよ。
狭いようで日本は広いです。 どの街にもおしゃれな雑貨屋さんがあるわけではありません(私の住むこの田舎町には皆無です)。 ネットの向こうに、あなたの作品を待っている方がきっといますよ。
ショップへの卸しとネットショップをうまく使い分けて、あなたの作品をもっと広く流通させましょうよ!

ちなみに私は現在もこれからも、ショップへの卸しはいっさいしません。 15年間やってきた私には、もうこれ以上勉強することはありませんし、時間もありませんので。


次回は 「レジンって、何?」と題しまして、レジン(樹脂)というのはどんなものなのか、私たちの生活にどのように関わっているのか、レジンでの物作りとはどういうことなのか、みなさんからのご質問の多い、これからのことについて、むずかしくならないようにお話しましょうね。 お楽しみに!