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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第48回
「物作りで大切なのは、自分らしさ」
(2003年11月1日UP)

今回のお話は、前回の続きのような内容です。
何かを作るというのはとても楽しいことですよね。 自分も作ってみようとお思いになったそのきっかけは、たとえばネットショップで人の作品を見たりですとか、お友達がやっているのを見てですとか、雑誌やテレビで見て興味を持ったですとか、いろいろあると思いますが、どなたでも始めは誰かのマネから入りますよね。
自分もあんな作品を作ってみたい、という気持ちがありますし、最初は素材の扱いにも慣れませんから、見て「いいな」と思った作品を自分でも作ってみたり、テキストのとおりに作ったりして、次第にその素材の扱い方を覚えていきます。
いきなりオリジナリティーを出すということはとても難しいことですし、上達も遅くなり、かえって遠回りになることが多いようです。 ですからはじめは誰かのマネや、テキストにあるとおりにお作りになるほうがいいと思いますね。

さて、素材の扱いにもなれて、作ることにも多少自信がついてくると、今度は自分でデザインをしたり、あるいはアレンジをしたりして、だんだんとオリジナリティーを求めるようになると思います。 ここが最初の分岐点だと思っています。 つまりこれからもそのジャンルの作品を作ることに楽しさを見出すか、それとも飽きてしまうかの境目なんですね。
人の作品と同じ物ばかり作っていると、だんだん飽きてくるんですね。 つまらなくなってくるんですよ。 作品に自分らしさを取り入れることができないと、やっぱり長続きはしないですね。

では自分らしさを取り入れるにはどうすればいいのでしょう? また自分らしさとはどういうことなんでしょう?
例えばあなたが誰かの作品や、ショップで商品を見たりした時に、いいなと思うものもあれば、それほどでもないものもありますよね。 その時に「これいいなぁ」「これはあんまりおしゃれじゃないな」、で終ってしまっては自分らしさを見つけることはできません。 人の作品などを見た時に、いいと思ってもよくないと思っても、「私ならここをこうする」「私だったらここはこの色じゃなくて、こんな色にするなぁ」「ここのバランスが悪いから、私ならここをこうするな」といったように、自分自身に主体性を持つことが大切なんですよ。

人の作品を素直に認めて、吸収しようとする姿勢はとても大切です。 しかしより自分らしい作品を作ろうとするのなら、客観的に見る目を持つことが必要なのです。
それには自分の好みをまずよく知らなくてはいけませんよね。 自分がどんなタイプの作品が好きなのか、そんなことはわざわざ考えなくても理解している、と思われるかもしれませんが、では具体的にどういうタイプのものが好きなのかと考えますと、案外ぼや〜っとしていてわからないもんなんですよ。
自分のスタイルをしっかりと把握するには、さっき言いましたように客観的な目を持って、「自分ならどうするか」と考える訓練をしなければいけないのです。 と、言いますとなにやらめんどくさそうな感じがするかもしれませんが、慣れればそれほどむずかしいことでも、面倒なことでもありません。

人にくらべて自分の作品はよくない、そんなふうに考えてばかりいては自分らしさは見つかりません。 前回書きましたように、まず自分と自分の作品に自信を持つことですよ。
自分に自信がないと、人の作品がうらやましく感じるばかりで、客観的に見ることはできません。 とにかく自信を持って、「私だったここの色はこうする」というように考えることで、自分の好みをしっかりと理解していくことがまず大切です。
手作りの世界は奥が深いですから、どんなジャンルであっても自分らしさを追い求めていれば、決して飽きるなどということはないのですよ。 たとえ扱う素材が替わったとしても、それは「飽きた」のではなく、自分らしさを追求した結果、さらに奥に進んだということなのですよ。

もちろん自分らしさをデザインとして作品に込めるのは容易なことではありません。 自分が考え出したジャンルであれば別ですが、最初は誰かがやっているのを見て、自分もやってみようと思ったわけですから、どうしても同じような仕上がりになりがちですし、無理に違うものにしようとすると、奇をてらったヘンテコなものになったりします。
はみ出してはいけない境界線が、「基本」ということになるのではないかな。 このあたりのことは私にもはっきりとはわかりません。 わかりませんが、奇をてらった作品はやっぱりよくないですよ。

私のように作るものがインテリア雑貨であれば、自分らしさを組み込むスペースも割と多いですから、案外オリジナリティーを表現しやすいのですが、ビーズやトンボ玉、アクセサリーなどの小さい作品をお作りになる場合、わずかなスペースに人とは違う自分らしさを組み込むのは、難しいことだと思いますね。
それでもいろいろな作品を見ていて、「わっ! この人すごい!!」と思うことがあります。 それはやっぱりほかにない「味」であったり、マネのできない「技術」であるからでしょうね。 そういう作品を作る人も、もちろん自分らしさを追及し続けたからこそ、人を惹きつける作品が作れるようになったのだと思います。
日頃の訓練や探究心がなくては、決してオリジナリティーを作品に込めることはできないのではないかな。 それにはまず、なにはさておき自分と自分の作品を好きになって、自信を持つことですよ。

私の作品を「個性的な作品」と評していただきますと、それはやっぱり嬉しいですが、自分ではそれほど個性的だとは感じてないんですよ。 よくありがちな気がして、どこかで見た誰かの作品を、無意識のうちにマネしてるんじゃないか?と、自分を疑うこともありますね。 でもショップなどを見て回ると、自分と同じような作品を作っている人や、似たような商品を見ませんから、やっぱり人とは違うものを作っているのかなと思います。 その程度ですよ。
ただショップなどを見ていますと、無意識に「自分ならこうする」ですとか、「ここの形はこうした方が、全体の流れがいいな」とか考えていますね。 意識して考えているわけでなく、もう職業病なのでしょうね。 以前は疲れることもありましたが、今は完全にそういう人間になってしまいました。

最近私はほとんどデザイン画を描かなくなりました。 頭の中で形を考えて、いきなり作り始めるわけなんですが、以前はふっと思い浮かんだデザインを、必ずデザインブックに描きとめていました。
人の作品を見て触発された時なども、線をマネるのではなく、自分ならこうするというデザインを描くわけです。 「描く」という作業は自分らしさを引き出すにはいいようで、描いているうちにいろんな線が頭の中から生まれてきて、発想も広がるような気がしますね。

趣味で作品作りをするにしても、職業としてもそうですが、作るのであればやっぱり楽しさが続いた方がいいと思います。 自分に向いてないからやめる、というのであればしょうがないですが、人と同じ物ばかり作って飽きちゃった、というのではもったいないような気がしますね。
せっかく手作りの楽しさ、という世界に入りかかったのに、その世界の奥の深い素晴らしさに気が付かないのは、残念ですね。
自分と自分の作品を好きになり、失敗を怖がらないで自信を持ち、主体性と客観性を身に付けて、さらに深い味を知ろうと創作を続け、ほんの少しでも人とは違う作品が作れるようになる、それが物作りの本当の楽しさだと私は思います。
自分らしさを作品に込めるというのは、奇をてらうのではなく、本当の自分を見つけることですね。 みなさんもまだ気が付かない自分自身を見つけて、もっともっと手作りを楽しんでくださいね。