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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第50回
「売れるアイテムと、売れないアイテム」
(2003年12月1日UP)

物を作るというのは、ジャンルやアイテムに関係なく、なんでも楽しいですよね。 なにもなかったところから、自分の創意工夫によって新たな命が生まれる、そんな感じがします。 そして出来上がった物のいとおしいこと!
趣味での物作りでは、人の反応が気になることはありますが、売れるかどうか、ということは考える必要はありません。 どんなアイテムでも自由に、気の向くままに作ることができます。
しかし作った物を売るとなりますと、なんでも作りたい物を作るというわけにはいかなくなります。 なぜならアイテムによって売れない物、売りにくい物、よく売れる物があるからなんですね。 ですから作りたいからといって、「売れないアイテム」ばかりを作ってもしょうがないということになるのです。
これは趣味で物作りをされる方にも、実は当てはまることなんですが、お作りになった物をご自分でお使いになるのであれば構いませんが、それを誰かにプレゼントするとなると、やはりアイテムを考える必要があります。
端的に言ってしまえば、ご自分がもらって困るような物は、人にあげても喜んでいただけないのですよ。 ではどんなアイテムであれば喜ばれ、どんなアイテムだとそうでないかをお話しましょう。

まずわかりやすいように、私の作品でご説明しましょうね。 私の作っている作品を売れる順に並べてみますと、「時計」「照明」「鏡」「小物」「フレーム」となります。 これは扱っている素材にもよりますが、だいたい一般のショップでも同じですね。
この順序はショップとして売りやすい順でもありますし、またプレゼントしやすいアイテム順でもあります。 そうなんです、雑貨小物の場合ギフトでご利用される方が多いので、売れるアイテム=ギフトにしやすいアイテムなのです。

ではどうしてこういう順序になるかといいますと、お客様の心理としまして、「動きのある商品」「実用性の高い商品」の方が、そうでない商品より無難だとお思いになるからなんですね。
ですから動きがあって実用性の高い時計と照明がよく売れるわけなんです。 鏡には動きはありませんが、実用的ですよね。 ジュエリーケースや一輪挿しなどの小物もそうです。 私の作る作品の中で、一番売りにくいアイテムがフレームであるわけなんですが、これは一見実用性があるように思われるかもしれませんが、元来日本人には写真を飾るという習慣がなかったので、今でもフレームは売れない部類のアイテムなんですよ。
私はショップに勤めていた時に、ご友人へのプレゼントを選んでいるお客様たちが、「写真立てもいいんじゃない? でもあの人写真飾るかなぁ。 それだったら時計かランプの方が無難だよね」、という会話をなさっているのをよく聞きましたよ。
ですからクリスマスが近くなりますと、商品構成を普段とは変えて、時計や照明、鏡などの種類を増やしたものです。

こうした売りやすい商品と売りにくい商品というのは、ほかのジャンルにもあるでしょうね。 例えばアクセサリーの場合、ネックレスやリングに比べますと、ピアスはちょっと下がるのではないでしょうか? さらにブレスレットやチョーカーはあまり売れる商品ではないと思います。
もちろん一概には言えませんが、需要がない物は売れないわけですから、日本人のライフスタイルからはずれているるような物に、力を入れても売上げにはつながらない、ということになりますよね。

商売で物作りをされる場合に、もらって困るような物、実用性の低い物をラインナップにたくさん連ねてもしょうがないですし、それでは商売として成り立ちません。 また趣味でお作りになっている場合でも、誰かにプレゼントをする際に、やはり同じことが言えるのですね。
気をつけなければいけないのは、作った本人の想い入れというものは、相手には関係ない、ということを理解していないと、「もらっても困る物」をプレゼントしてしまうことがあるんです。 どんなに苦心して、心を込めて作った物だとしても、タバコのパッケージで作った白鳥などをいただくと困っちゃいますよね。 「実用性の高い無難な物」を選ぶということは、贈る相手への気遣いでもあるのです。
ショップをされる方にはこうした見極めと、それに応じて自分を抑えてニーズに迎合することが要求されますし、趣味でお作りになった物でも、ご自分が気に入っているからといって、あげた人もそう思うとは限らないということを、客観的な目でよく認識する必要があると思いますね。

ここで一番売れない物、もらって困る物をお教えしましょう。 それは「置き物」。 ただし相手に対するメッセージ性のあるものは別です。 メッセージ性もなく、なんの機能も付いていないただの置き物、これはもらっても困りますよね。 したがって売れないのです。

もう一度話を戻して、売れる時計と売れないフレームに関してもう少しくわしくご説明しますね。
一般の方から見ますと、時計よりフレームの方が作りやすいと思われるのではないでしょうか? これがまったく逆なんです。 フレームはその構造もとてもむずかしいですし、またフレームは写真などがメインであるというアイテムの性質上、フレーム自体が目立ってはいけません。 かといってある程度の個性、自己主張がなければ商品として成り立たないわけで、つまりそのバランスが非常に微妙で、作る構造もデザインもとてもむずかしいのです。 それにくらべれば時計ははるかに簡単ですね。

フレームの写真を飾るところに鏡を貼り付けたり、穴をあけてムーヴメントを取り付けて、時計にしたりするだけでアイテムは違う物になります。 それは私の作品の「ゼリービーンズシリーズ」をご覧いただければ、おわかりになると思います。 構造が同じであれば売れるアイテム、売りやすいアイテムにした方が、商売からすれば得と言えるのです。
私の作品にフレームが少ないのは、作るのがむずかしい上に、それほど売れないからです。 新作に時間をかけるのであれば、売れる作品に費やした方がいい、というよりも、そうでなくては商売としてやっていけないのですよ。 しかしそれでもやっぱりプロですから、ラインナップとして作る必要はあるのですけどね。

自分が好きで始めたことでも、商売になるとつらくなるというのはこのためなんですよ。 作りたい物だけを作る、というわけにはいかなくなりますからね。
趣味や自分の楽しみで作る、それが一番いいと思いますね。 私も時々ヘンな物を作ったりしますよ。 落ち葉をエポキシレジンで固めたりね。 そんな大きな物はストラップはもちろんのこと、キーフォルダーにだってできませんが、それでもちょっと飾っておくだけで楽しいですよ。 市場にニーズはなくても、自分の楽しみであれば構わないわけですからね。

ネットショップを見ていますと、「このアイテムをこんなにたくさん作るのなら、もっと売れるものにすればいいのに・・・」、失礼ながらそう思うことがしばしばあります。 せっかくの努力が報いられないのはもったいない、そんな気持ちなんですね。 みなさん一生懸命にやってらっしゃるのがわかりますから、なおさら残念に思うのです。
趣味と商売は違います。 その違いに気が付かないと、売上げには結びついてきません。 みなさんがもし本気で「売りたい!」とお思いになるのでしたら、客観的にご自分の作品のラインナップをご覧になり、ニーズの多いアイテムを増やし、さらにデザインにおいても、お客様のニーズを受け入れる勇気をお持ちになることをお薦めしますよ。