トップページに戻ります




  
雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第52回
「新たな販路を求めて」
(2004年1月2日UP)

現在雑貨や小物、インテリア雑貨、アクセサリーなどは、ショップに卸すか、自分のショップで販売するのがほとんどでしょう。 もちろんバザーや様々なフェスタ、展示即売会もショップとみなしてです。
私自身長い間ショップへの卸しをしてきましたし、現在では自分のネットショップを運営して作品を販売しています。 それではほかに販路、つまり自分の作品を売る場所というのはないのでしょうか? 私はまだまだ開拓の余地はあると思っています。 やり方によっては、今よりもむしろおもしろいこともできるのではないかな、そんなふうに考えはじめています。

私が今一番有望だと思っているのは、意外と思われるでしょうけれど、観光地のお土産屋さんです。 もちろんどんなお店でもいいというわけではありません。 やはりある程度しゃれた店構えであることが大前提ですが、作品の提案の仕方によってはおもしろいと思いますね。
私がお土産屋さんに目をつけたわけは、みなさんも旅行に行って経験されたことがあると思いますが、今、日本中どこの観光地に行っても、売られている物はだいたい同じですよ。 漬け物にしてもお菓子にしても、その土地で作られたのではなく、大きな会社で大量に作った物を仕入れて、それに自分の店のシールを貼るだけです。
それは雑貨、小物でも同じですよね。 「なんでここでこんな物を売ってるの?」、そう感じたことはだれしもあると思います。

私たちが旅行に行ってほしいのは、記念になる物です。 その土地に行ったという記念ですね。 ですからどこにでも売っている物など見ると興醒めするわけですよ。
その土地の特色を生かした物、その土地ならではの物、その土地でしか手に入らない物、そういう物をお土産にしたいのですが、ほとんどお目にかかりませんね。
量産品には「日常」を感じさせるイメージがあります。 しかし旅行はお金をかけた「特別」な時間です。 その旅行先で量産品のお土産、しかもどこで作られたのかもわからない物が嬉しいでしょうか。 私はうんざりですね。

私と同様にうんざりしている人はきっと多いでしょう。 ですからハンドメイドの作品を売ったら「おもしろいんじゃない?」と思うのです。 もちろんその土地の名物をデザインしたり、イメージした作品です。 これにも二通りの商品のタイプがあっていいでしょうね。 つまりある程度数を作ることができる「ちょっとした物」と、その土地で創作活動をしている作家の作品として、「一点物に近い物」を売るということですね。
後者の場合は、ある程度自分でディスプレイなどをする必要があると思いますが、それもおもしろいんじゃないですか? お客様と接する機会も生まれるかもしれませんしね。
今はどこからでも荷物の発送ができますから、比較的大きな物、高価な物でもいいでしょうね。 その場合はショップに「委託する」というかたちをとった方が無難でしょう。 売れないからといって値段を下げられては困りますからね。 委託であれば時々作品を入れ替えて、飽きられないようにすればショップ側も喜ぶでしょう。

ちょっとした物でも一点物に近い物でも、お土産屋だからといってレベルを下げないのは言うまでもないことですよ。 本当にいい物を売るんです。
またお土産屋さんだけでなく、最近はよく小さなミュージアムなどがありますから、そうしたところに置いてもらったり、タイアップして名入れなどのサービスをするのもいいでしょうね。
私は以前あるところで、「ティディベアーミュージアム」をのぞいたことがありますが、そのときに 「これなら地元で活動している作家さんや、趣味で作っている人たちの販路になる」と感じました。
そのほかにもホテルや旅館などのお土産コーナーも、お互いに意見が合えば大きな販路となるでしょう。 こうしたところへ目をつけて、自分の作品を売る場所を拡大していくことも、これからは大切だと思っています。

もうひとつの販路としまして、結婚式場があります。 これはある程度の組織力と営業力を必要としますが、教室をお持ちの方であれば十分に実現は可能だと思います。
最近では押し花のウェルカムボードはよく見られるものとなりましたし、新郎新婦の手作り感あふれる式が好まれる傾向にありますから、企画力とデザイン力が要求されることは確かですが、仕事としてはとてもやりがいのあるものになると思います。
私はブライダル事業は、今後クラフトに携わる人たちにとって、大きなマーケットになりうると考えています。


しかしこれまで書いてきました販路拡大で一番大切なのは、「自分自身で道を切り開く」ことです。 営業は苦手な人が多いでしょう。 私も嫌いです。 でも頭を下げ、恥をかき、自分の作品のいたらないところを指摘してもらうことは、物作りである程度でも収入を得ようとする場合、これは絶対に必要なことなのです。
もしそれがイヤであったり、そこまではしたくないとお考えであれば、趣味の範囲で留めておくか、ご自分のショップのみの収入で満足してください。 しかしどのような方法であれ、お客様からお金をいただくのであれば、少なからず営業的な努力は必要だ、ということは、これまでにも書いてきたとおりです。 赤の他人のお客様からお金をいただくということは、その方の労働の代価をいただくことですから、作品にもショップの運営にも、それに見合う努力を注ぎ込まなければいけないのです。

ネットの普及によって自分のショップを持ちやすくなったことは、とてもいいことだと思いますし、手作りを楽しんでいらっしゃる方や、美大、芸大、デザイン学校を出て、これから活動をしようとお考えの方には、ぜひネットショップをやっていただきたいと思っています。
正業として、または趣味と実益を兼ねた副業として、ネットショップというのは最適だと思います。 そしてもしあなたに、さらにご自分の作品を広く販売したい、そのためには恥をかくことも、努力することもいとわない、というお気持ちがあれば、今回書いたように販路はまだまだあります。
大切なのは作品の良し悪しだけではなく、お客様からお金をいただくということがどれほど大変であるか、そして趣味と仕事では、同じ作品を作るのであっても、まったく別のことだということを、気持ちの上で正しく理解することです。

最後に少し厳しいことを書きますが、ご自分の作品を販売するということは、とても有意義で楽しいことですが、私が見まして、あるいは話に聞きまして、少し考えの甘い方も多く見受けられるようです。 お客様に対する誠意はたいていの方が持ち合わせています。 しかしお金をいただくことの重大さに気がついていない方が、ちょっと多いのではないでしょうか?
ご自分は趣味のつもりでも、値段を表示してお金をいただく以上、わずかな金額であれそれは「仕事」です。 当然責任も生じます。
また私のところへは、「どうしたら売れるショップにすることができるでしょうか?」と、おたずねにくる方がたくさんいらっしゃいますが、「この人は努力しているな」と感じる人と、「なんでも聞けばいいと思っているんじゃない?」と感じてしまう人がいます。
まずは自分自身で悩み、工夫をし、努力してみなければいけませんよね。 それでもどうしてもわからない、というのであれば、私はどんなにでもお手伝いさせていただきますよ。 しかし苦労するのがイヤだ、という方は、失礼ながら作品を販売するのはやめた方がいいです。
こんな苦言は書きたくはないのですが、安易な気持ちで「仕事」をしますと、お客様にも迷惑がかかりますし、またご自身もイヤな想いをすることになりますから、あえて付け加えさせていただきました。