Vol,14〜Vol,59
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第55回
「勇気を出して作品を売りに行こう!」
(2004年2月16日UP) |
これまでにもネットショップで作品を売りましょう、という話はしてきましたが、商売の原点である、実店舗へ自分の作品を売りに行くにはどうしたらいいのか?という、みなさんの疑問にお答えしましょう。 とは言いましても、これは雑貨屋でアルバイトをして、その後で雇われ店長をし、そしてメーカーとなって雑貨屋さんに商品を売り歩いた、私の経験から得たことですから、アクセサリーなどほかの業種には、あてはまらないこともあるかもしれませんので、そのつもりでお読みくださいね。
売りに行くことを 「営業」と言います。 初めてのショップに売り込みに行くことを、「飛び込み」と言います。 今はどう言っているのかは知りませんが。
おそらく日本人で 「営業が好きです!」という方は少数でしょうね。 それは業種に関係なくそうだと思います。 精神的にものすごく疲れますからね。 苦手な人が多いでしょう。 私も苦手でした・・・
なかなか飛び込む勇気が出なくて、ショップの前を行ったり来たりしたもんですよ。
でもイヤだからといって帰ってしまっては仕事になりません。 仕事にならなければ収入もありませんから、気持ちを奮い立たせて、無理に笑顔を作って(笑)ショップのドアを開けたんですよ。
趣味での物作りと、商売としての物作りはまったく違います。 なにが違うのか?
趣味の場合は自分が楽しくて、そしてできた作品が気に入ればそれでいいわけですが、商売ではそうはいきません。 お客様に気に入っていただけなければ、いかに自分が楽しかろうが、作品を気に入っていようが関係ないのですよ。 つまり自分のために作るのが
「趣味」で、お客様のために作るのが 「商売」なのです。 作るものは同じでも、作るための気持ちが違うのです。
友達や家族が 「かわいい!」「きれい!」といってくれても、それは社交儀礼であり、それをまにうけて商売に出ると、つらい想いをしなくてはいけません。 人のために作るというのは、それほど簡単なことではないのです。
それでは具体的に商売を始める準備に入りましょう。
まずは作品を作ります。 当たり前のようですが、たくさん作りためたようでも、さてそれを
「商品」として見たときに、意外と自信を持って売りに行ける商品がない、ということに気がつくのです。 売れなければなにもなりませんからね。
ですからまずは「趣味」とは決別して、「商品」を作ります。 それもできるだけ種類があった方がいいですね。 数はそれほどなくてもいいですが、アイテムやタイプの違うものを、できるだけたくさん持っていた方が飛び込みやすいですし、置いてもらいやすいのです。
これはショップの人の立場に立って考えればわかることですよね。 オーナーさんや店長、仕入れの担当者としては、どうせ新しい業者を入れるのであれば、まとまった種類の商品がほしいと思うものですし、いかにいい商品でも2、3種類しかないとか、アイテムが少しだけだとめんどくさくて、取引を始める気にならないんですよ(経験者談)
ですからまずはじっくりと腰を据えて、ある程度まとまった種類の商品を作りましょう。
商品ができたら値段を決めます。 高すぎず、安すぎず、なかなかむずかしいものですよ。
ショップでの売値を 「上代(じょうだい)」と言い、ショップへの卸値を
「下代(げだい)」と言います。 通常上代の60%が下代です。 これを
「掛け率60%」と言い、また簡単に 「6掛け(ろくがけ)」とも言います。
掛け率はショップによって違うこともありますし、「もう少し掛け率を下げて」と言われることもありますが、「6掛けで上代を設定してありますから」と、お断りした方がいいでしょうね。
値段はお見せするサンプル作品に、わかるように付けておくといいですよ。
できた商品はそのまま剥き出しでカバンに入れるわけにはいきませんよね。 ひとつひとつPP袋に入れましょう。 まとめてビニール袋にごそっと入れますと、安っぽく見えますよ。 透明度が高く、パリっとしたPP袋は商品をきれいに見せます。 ひとつひとつPP袋で包むことで、商品を立派に見せるとともに、キズがつくことを防ぐことがます。 またアクセサリーの場合、ネックレスなどがからまっちゃうのは印象がよくないですよね。 ですからひとつひとつ袋に入れましょう。
PP袋はどこで買うことができるか? それはのちほどご紹介しますからご安心を。
さてがんばって商品をたくさん作ったとして、営業に行くには揃えなくてはいけないものがあります。
まず「名刺」。 そんなに凝ったものを作らなくてもいいですよ。 自販機みたいなので作ってもいいですし、パソコンで作ってもいいです。 ちなみに私は以前はワープロで、今はパソコンで必要に応じて適当に作っています。
名刺には「メーカー名」「あなたの名前」「住所」「電話番号」「メールアドレス」、ホームページをお持ちであればURLも書いておきましょう。 それから「インテリア雑貨」ですとか「オリジナルビーズアクセサリー」ですとか、売っている商品がわかるようにしておいた方がいいでしょうね。
次に「伝票」を買いましょう。 納品書と請求書ですね。 私が以前使っていたのは、納品書はコクヨの「納品書 請求付3枚複写 ウー333」、請求書は同じくコクヨの「合計請求書 複写 ウー329」でした。
ただし最近は「委託販売」のショップが多いですから、2枚複写の納品書も必要でしょうね。 「委託販売」に関しましてはのちほどお話しますね。
伝票に書きますと、「ちゃんとしている」という印象を与えますからね。 もちろんイメージだけでなく、商売をする上で絶対に必要なのですが。
それからそれに付随する「電卓」ですね。 これも携帯電話の電卓機能を使わずに、ちゃんと電卓を持ちましょう。 できるだけおしゃれな電卓がいいですね。 売る商品がよくても、こうした備品がダサくては印象を悪くしますよ。
同じ理由で、筆記用具、商品を入れていくカバンもおしゃれな物を用意しましょう。 それも大人っぽいものがいいですね。 キャラクター物は絶対に不可です。 キーフォルダーやストラップにもキャラクターや、かわいい系のものは絶対にやめましょう。 商品の品位が下がります。
さぁ、これだけ揃えればいつでも「飛び込み」に行くことができます。 でもいつ行ってもいいのかといいますと、そういうわけではありません。 やはりショップが忙しいときを避けなければいけませんね。
それではいつ行ったらいいのでしょう? それはそのショップの定休日にもよりますが、私は水曜日か木曜日がいいと思っています。
なぜか、その理由は簡単です。 ショップは水曜日と木曜日が暇だからですよ。 すべてのショップがそうだというわけではありませんが、その理由をご説明しましょう。
土曜日、日曜日に営業に行こう!なんて考える人はまずいないでしょう。 一週間のかき入れどきです。 その忙しいさなかに
「商品を見てください」なんて言ったって、怒られるだけですからね。
では月曜日はどうでしょう。 月曜日も忙しいんですよ。 土、日に売れた商品を発注しなければいけませんからね。 在庫の数をあたったり電話をかけたりして忙しいのです。
では火曜日は? 火曜日は月曜日に注文した商品が届きますから、その値付けや品出し、ディスプレイ、在庫の整理整頓に追われますから、これまた忙しいのです。
というわけで、水曜日になってようやくショップが落ち着くわけですね。 しかも一般的に週の真ん中は、お客様はあまりお買い物においでにならないものなのですよ。 ですから「飛び込み」や「営業」に行くのは、水曜日か木曜日がいいと、私は自分の経験からそう考えるのです。
時間は午前中か、午後1時半から3時の間ですね。 午前中は暇ですからね。
午後1時半というのにも理由があります。 仕入れをするオーナーさんや店長さんは、ほかの店員さんのあとで食事に行くことが多いですし、また午後にならないとショップに来ない人も多いのですよ。 ですから1時半なのです。
ではなぜ3時までなのか? その時間をすぎますと、そろそろ学生さんが学校帰りにショップに来るからです。 すべて理由があるのです。 もっとも立地やショップのアイテムにもよりますけどね。
最初は1、2店のショップから始めましょう。 まずは営業に慣れることが先決ですから、欲張ってたくさんのショップに商品を卸そうとしない方がいいですよ。
製作と営業とを両立できるようになり、少し余裕ができてきてから次のショップに飛び込みましょう。 商品を置いてもらうショップは、ひとつの地域に1店だけです。 同じエリアにある別のショップに商品を卸しますと、バッティングしますからショップに嫌がられます。
どういうショップがいいか? やはり売れているショップですよ。 しかし最初からチェーン展開している大きなショップは無理ですし、向こうも相手にしてくれません。 オーナーさんが自分でやっているショップがいいでしょうね。
商品ができて、必要な備品を揃えて、ショップが決まったら思い切って飛び込んでみましょう! 大丈夫です、命を取られたりしませんから、勇気を出して飛び込んでみましょう。
おどおど、ビクビクして小さな声で話しては印象を悪くしますから、笑顔を作って元気に入って行きましょう。 そして
「私、○○を作っています、□□といいます! お忙しいところすみませんが、商品を見ていただけませんか?」と、声を掛けて名刺を出します。 「いいですよ」と言ってくれたらしめたものです。 それでも「今、お時間大丈夫ですか?」と言う配慮をお忘れなく。 こういうところが大事なのですよ。
ドキドキしながら商品をカバンから出して、ひとつひとつ説明しながら見ていただきましょう。 その時自慢しないこと! 自慢をしないで、素材はいい物を使っていること、丁寧な作りであることを客観的な目で説明しましょう。
1回で置いてくれることもありますが、「うちはこういうのやらないから」と、断られることも多いです。 それでへこんでしまわないで、「こちらで売れている商品を教えていただけますか?」とたずねて、「それでは今度こちらのショップに合うような商品を作ってきますから、また見ていただけますか?」と、お願いしてみます。 それで断られたらあきらめて、次のショップを目指しましょう。 「いいですよ」と言ってくださったら、うかがって迷惑にならない曜日と時間を聞くのを忘れずに。 こうした気配りも大事です。
オーナーや店長が留守の時は、「何時頃おいでになりますか?」とたずねましょう。
商品を見ていただくときに、「作品」と言ってはいけませんよ。 あくまでも「商品」です。 「私の作品」などと言いますと、反感を持たれてしまいます。 オーナーさんや店長さんをたてて、自分は少しへりくだること、それが商売というものです。 卑屈になることはありませんが、謙虚な気持ちで売りに行くことをお忘れなく。
最近は「買い取り」で置いてくれるところは少ないでしょうね。 たいていが「委託販売」です。 委託販売というのは、ショップに置いてもらった商品の数と値段を、「仮伝票」に書き入れておき、月末などショップの「〆日(しめ)」に、ショップに残っている数をあたって、売れた商品とその数をしらべて、「本伝票」を切ってショップに渡す商売のやり方を言います。
仮伝票を切らずに本伝票に書きますと、〆に赤伝票を切っていったん伝票上で残った商品を返品し、さらに本伝票を切る(赤黒伝票を切ると言います)、という面倒なことをしなければいけなくなりますから、委託の場合は仮伝票を使った方が便利です。
仮伝票を「仮伝」、本伝票を「本伝」と、簡単に言ったりもします。 仮伝は2枚複写の簡単な伝票、本伝は納品書と請求書複写がついた、3枚つづりのきちんとした伝票です。
本伝の複写した納品書をショップに渡すわけですね。 複写した請求書は正式な請求書に、ホチキスで一ヶ所とめてショップに渡します。 正式な請求書が上、複写の請求書が下ですよ。 正式な請求書には商品を卸した「月」、〆た「日付」、ショップの「名前」、「合計金額」、「別紙請求書の枚数」と、その「合計金額」、消費税をもらうほど儲かりませんから、消費税はいただきません。 したがって消費税の欄は書きません。 そして「当月請求額」を書き入れます。
ショップの名前の右横の空いたスペースに、あなたのメーカー名、住所、電話番号をプリントするか、プリントしたシールを貼るか、スタンプを作って押すか、手書きするかして、判を押します。
ちゃんとした会社組織になっているショップでは、メーカー名と住所、判がなければ請求書と認めない、というところもありますよ。
支払いはショップによって違います。 だいたい月末に〆て、よく月末に支払いとなります。 これを「末〆の翌末払い」と言います。
45日間隔のところもありますし、2ヶ月なんということころもありましたね。 私は長くても45日で、それ以上支払いまで間隔があくショップとは、取引をしないことにしていました。 なぜって怖いから。
ショップとの駆け引きとして、「返品」という重大な問題があります。 もちろん委託ではなく、買い取りの場合ですが。 私はすべて買い取りで一切返品は取らない、で貫いてきましたが、今はちょっと無理でしょうね。
以前のショップのオーナーさんはプライドを持っており、返品なんかしないものでしたが、今はそうはいかないと思います。 できるだけ返品は取りたくないですから、もし返品したいと言われてしまったら、同じ値段の商品と交換してください、と頼んでみましょう。 これを現物交換、簡単に
「現交(げんこう)」と言います。
それでもどうしても返品したいと言われるようでは、商品が悪いか、オーナーさんにやる気がないかのどちらかですから、思い切って返品を受け取って、そのショップからは撤退した方がいいですよ。
もうひとつ「値引き」という問題があります。 売れない商品を値下げして売るわけですね。 あなた自身が値段を下げるのであればいいのですが、ショップが値段を下げると言ったら、断って返品してもらった方がいいです。
卸しているすべてのショップで、同じ値段で売るのが原則ですから、値下げには応じない方がいいのです。 これは損得ではなく、自信を持って作っていると、アピールする上でも大切なことなのですよ。
以上が自分の作品を売りに行く手順とコツです。 あなたが物作りで食べていこうとお考えであれば、勇気を持って売りに行きましょう。 実店舗に売りに行くことが作品の向上にもつながります。 オーナーさんや店長さん、お客様の反応やご意見を伺うだけでも勉強になります。 こうした経験なくして、デザインの向上はありえないと私は考えています。
だれだって知らないショップに飛び込むのは勇気がいりますよ。 でももし充実した人生を望むなら、その一歩を踏み出す勇気を持ってください。 10軒回って1軒商品を置いてくれれば御の字と思って、断られても断られてもくじけずに、自信を持って売りに行きましょう。
そしてこれまで以上にいい商品を作る努力をしてください。 物作りに完璧などありません。 絶えず上を目指しましょう。 一度しかない人生です。 思い切ってやってみましょう。 ネット販売では味わうことができない感動があなたを待っていますよ。 がんばって! |
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