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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第60回
「ネットショップ運営11年間で変わったこと」
(2012年1月5日UP)

さて、最初に書かなければいけないは、前59回を書いたのが2004年11月で、それから約7年あまりもの空白があるわけですが、その間この男はいったいなにをしていたのか? ということでしょうね。

生きてました。 生きて働いてました。 当たりまえだ。
まぁ つまり創作品の販売はせずに、成型材料の販売だけを行っていたのです。 なぜかと言いますと、私の住む市の子ども会役員としての仕事にどっぷりと浸かりこんでしまって、じっくりと創作に取り組む時間が取れなくなってしまった、ということがひとつありますね。

仕事に支障が出るほど子ども会活動に時間を費やすとはなにごとか、と言われてしまいそうですが、この7年間は私にとりましてかけがえのない時間でしたね。 必要に迫られて勉強した心理学やカウンセリング、コーチングの知識や技術は、7年前とはまったく別の人間に私を変えてくれました。 こうした経験をせずにあのままアメージングの仕事だけをしていたとしたら、そう考えただけでぞっとするほどですよ。 私にとりましては貴重な研修期間だったわけです。

もうひとつ創作から遠ざかっていた理由は、自分の作りたい物がよくわからなくなってしまっていたんですね。 自信もなくなっていたのでしょう。 事実、2003年12月の第51回で私は、「作品が作れるのもあと3年」 ということを書いています。 どこの誰がそんな弱気なことを言ったんだ?と思ってしまいますよ。 つまり7〜8年前の私はいい精神状態ではなかったのでしょう、よく覚えていませんが。

今の私は創作に対する情熱がとても強く、それはレジンに限らず、木工やガラスなどさまざまな素材にも挑戦し、作品に取り入れたいと考えています。 もちろんデザイン力が向上したわけではないですし、年齢からくる感性の衰えは感じられますが、それはあまり問題ではないと感じています。



私自身はいろんな体験をし、いろんな人と出会い、いい経験をたくさん積んで、ひとまわりもふたまわりも大きくなって創作活動の現場に戻ってきたわけですが、世の中の方はどうでしょう? 景気がどうのという話をしてもしょうがないですから、創作活動や作品の販売を取り巻くネットの世界について、私がネットショップを始めた11年前とくらべて、どう変わったかということについてちょっと書いてみますね。 あくまでも私個人の感想とお断りしておきます。


ネット環境に関しましては、飛躍的に回線の通信速度が速くなりました。 11年前にはほとんどの人が普通電話回線でネットにつないでいて、そろそろISDN回線が出始めた頃でしょう。 普通電話回線からISDNに換えた時の快適感と驚きは、いまや遠い昔のお話しとなり、現在では光回線などの高速回線が圧倒的多数となっていますね。
それにともなって配信されるコンテンツも情報量が多くなり、動画もサクサク観られるようになりました。 テレビほどではありませんが、もうほとんど待ち時間を気にすることはありません。 とても快適です。

ではネットショップを運営するに当たり、そうした回線の高速化はどのように影響してきたでしょう。 まずページに貼り付ける画像のバイト数が大きくても平気となりました。 それによって作品や商品のイメージを、よりくわしくお客さんに見ていただけるようになり、買う側の安心感が増したのは、私自身ネットショッピングを頻繁にするのでよく感じることです。 まぁ 「画像を拡大する」をクリックしたら同じ画像が別ウィンドウで開いた、ということもまだ多いですが・・・

私にとりまして大きなサイズの画像を貼ってもよくなったことはとてもうれしいですね。 と言いますのは、私はネットショップを始めた頃も今も、いかにもウェブサイトっぽいデザインにはしたくなくて、ファッション雑誌をパラパラとめくるような感覚で見られる、写真中心のサイトにしたかったんですよ。 ですから以前のように画像1枚30KBが限界という回線スピードでは、高画質の写真にすると小さい画像しか貼れなくて、少し大きな画像を載せようとすると画質が荒くなってしまう、というジレンマもだいぶ解消されてきました。(サイトを再構築したのに以前の画像のままであるのは本人の怠慢のためですが・・・)

ですから最近は、ハンドメイド作品を販売されるサイトがとてもきれいになりましたね。 サイトデザインのよさももちろんありますが、やはりネットでは画像が命ですから、高画質の画像が載せられるようになったのは大きいですよ。


その他にも回線がよくなったおかげでショッピングカートの動きもすばやくなりましたし、サクサク開くようになりましたから、よりたくさんのページを見ていただけるようにもなったと思います。
でも基本的には私自身の運営スタイルも、サイトデザインに関する考え方も変わっていませんから、再構築したアメージングも相変わらずのオールドスタイルです。 見やすくはなりましたけどね。
アニメーションなどを駆使した動きのあるページにしたいとは思いません。 私にとりましてネットショップはあくまでもファッション雑誌の延長ですから。 紅茶でも飲みながら、ゆったりとした気持ちで見ていただきたいですね。

つまりネット環境が進歩したことによるプラスは多々ありますが、ショップの運営そのものには大きな変化は感じていないです、私は。


しかし、大きく変わったと感じることがあります。 それはネットを活用する人間の方。
まだPCやネットが目新しかった頃にくらべて、ネットに対する興味や関心が薄くなってきたように感じます。 ネット上は情報やサイトがあふれかえって、飽和状態をはるかに超えているように思えますが、さて使ってみると案外見るべきものも、ハマるサイトも、有益なコンテンツも少ないと思いません? 楽天やAmazonでのショッピングや、辞書代わりとしてしかPCを使わない人も多いと思います。 あとはゲームとか。

だから新しいサービスが現れると、とりあえずワッとそれに飛びつくんじゃないでしょうか。 ブログもそうだったし、TwitterやFacebookも登録者数は多いですが、実際に活用している人はとても少ないです。 いざ使ってみるとなんの反応もなくて、カキコミやつぶやくことに飽きてやめてしまう人が多いんじゃないかな。
スマートフォンでもタブレットでも、活用しているのはアプリで遊ぶことばかり。 ゲーム機との差がわからなくなってきています。

かつてのテレビがそうであったように、ネットも当たり前の存在になった今、停滞からネット離れとなってきているのかもしれませんね。
ネットに飽きてしまった人が形の違う端末にとりあえず飛びついてみるものの、つながる先のネットやコンテンツは変わらないんですからすぐに飽きてしまいますよ。 どんな端末も一時的な流行りでしかありません。



人が変わったのはネットに関してだけではありません。 正直に言って今はネットで手作り作品が売りにくくなっています。 ネットへの関心の低下もありますが、日本人全体の購買意欲の低下も大きいですね。 デパートが成り立たなくなっていることをみてもそれがわかります。
原因はなんなんでしょうね。 人はない物ねだりをする生き物ですから、物があふれかえっている現代では 「ほしい」 という感情がわきにくいのでしょうか? デフレで多くの物が100円あるいはとても安く買える世の中になって、物の価値が判断できにくくなっているのでしょうか? 不景気・就職難などのマイナスイメージが浸透して、生活を彩る余裕をなくしているのでしょうか? たぶんすべてが影響しているんでしょうね。

以前にくらべて、インテリアや小物などに気を使う若い人が少なくなっているのは確かです。 身に付けるものはおしゃれでも、家では100円ショップなんかで買った鏡やグラス、小物などを使っている人が多いんじゃないかな。 それは以前では考えられないことです。 100均の物を使っているのはイージダウンになりましたからね。
もちろん100円ショップが悪いと言っているのではなく、インテリアや小物などに対するおしゃれのボーダーラインが下がった、という意味です。

バブルの時の 「高い物はいい物」 という感覚は最低でしたが、「悪かろうが安い方がいい」 という人の多い今の感覚も悲しいなと思ってしまいます。
手間と材料費のかかる手作り品はどうしても値段が高くなってしまいますから、結果として売れにくいということになるわけですよ。


でも私はこうした状況は少しずつよくなっていくと楽観しています。 だって誰だって今の状態がいいと思っているわけじゃないですから。 作りも素材も雑で安っぽい中国製の物より、いい材料で手間をかけて作った物の方がオシャレだし、使うにつれて愛着も感じるようになりますからね。
手作り品の味、良さをが求められる時がまたきっときますよ。 私はそう思っています。 その時がきてダッサイ物しか作れなくなっていちゃしょうがないですから、今よりももっといい物が作れるようにがんばりますよ。