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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第15回
「雑誌とネットショップ、既存店の複雑な関係」
(2002年6月16日UP)

今回の内容は前回の続きですから、お読みでない方はバックナンバー14をご覧くださいね。 (ご要望にお答えして今回からバックナンバーを公開することにしました。 ただし14回以前のものは保存していないのでありません。 す、すみません! これまで書きました内容も、今後もう一度思い出して書こうかなと思っています。 一度読んだものと重複することもあるかと思いますが、あらかじめご勘弁のほど)

それでははじめましょう。
前回はこれまでの雑貨ショップと雑誌との関係を書きましたから、今回は現状に関してちょっと書いてみましょう。
今と以前の状況と違うのはみなさんご承知のとおり 「ネット」の普及があります。 これまでは雑誌がショップの新商品や、売れ筋商品の動向を知るための唯一の手段でした。 全国一斉に発売されるわけですからその効果は絶大でした。
しかし前回書きましたとおり、雑誌はその 「時間差」のために、ショップにとって時には重荷となったわけです。 雑誌は効果的であっても、結局はご来店くださるお客様がメインであったわけですね。

これまでのショップはお客様が来てくださるのを待つだけでした。 ショップからお客様にアプローチする方法がなかったのです。 ですから考えてみると効率が悪いですよね。その地域にお住まいの方にしか来ていただけないのですから。 もちろんそうして来てくださる方と接することが、雑貨屋で働く楽しみでもありましたが。

私は雑貨屋の店員からメーカーに転身しましたから、ショップのそうした事情はよくわかっていました。 そしてメーカーはショップの集客力、またそのための努力に頼るしかないということに、メーカーの立場の弱さ、商売としての不完全さを感じていました。
ショップに来てくださる方がほとんど地域の方に限られるとしたら、たくさんの店舗を持っているショップと付き合うことが必要となるわけですね。 ところがそれは実際にはなかなかむずかしいことで、結局何店ものショップに作品を卸すことになるのです。

しかし私の場合すべてハンドメイドですから、たくさんのショップに作品を卸すということはほとんど不可能なんです。 何店ものショップに営業して回っていたのでは、作品を作る時間がなくなってしまいますからね。 実際に営業は私にとって非常に負担でした。
安定した収入を得るためにはたくさんのショップと付き合わなければならない。しかしそれは時間的に無理だとしたらいったいどうしたらいいのか。
全国の個々のお客様に対して、リアルタイムで作品を提供する方法がないだろうか。 それがメーカーをはじめた頃からの悩みでした。

ダイレクトメールはどうだろうか? 「販促にDMを出してみませんか」という、専門の業者があったんですね。
しかしDMを見て買ってみようなんて方はまずいらっしゃらないでしょうし、そんな予算もありませんでした。
そのうちに通販が流行りはじめました。 これはどうだろうか? と思いましたが、どうも通販=値段の安いバッタ物 というイメージがありましたし、事実そうでしたからこれもダメ。
そんなことをしているうちに10数年経ってしまったわけです。


ウィンドウズが発売され、私のまわりでもコンピューターを買う人が増えてきました。 しかし 「あまり利用価値のない物だな」というのが私の感想でした。
「インターネットを楽しもう」・・・何を見るの? そんなに必要な情報があるの?
「自分のホームページを持つ」・・・何のために? だれが見るの? そう思っていました。
そのうちに 「e−コマース 」という言葉を耳にするようになり、これには心惹かれるものがありましたね。 ネット上で商品を売る、もしそんなことができたら・・・。 で、昨年平成13年にネットショップへ転換したわけです。 そのドタバタ劇に関しましてははしょりますね。

ネットショップをはじめてみて、ネットの世界を少しずつ知るようになって、これこそ自分が長年想い描いていた商売のあり方であると、確信するにいたったわけなんです。
これから雑貨の世界もネットが中心になっていくだろう。 既存のショップもどんどんネットに力を入れるようになるだろうし、雑誌でもネットショップが取り上げられるようになっていくだろう、そう考えたのですが、実際にはそう簡単ではないようです。

既存店もネットショップを運営していますし、雑誌も多少はネットショップを取り上げてはいますが、どちらも力を入れているという状態には程遠いように思えるんですね。
なぜなのか、はじめはわかりませんでしたが、だんだんとその理由がわかってきました。

地域に1店舗や2店舗くらいのショップでしたら、ネットショップは相乗効果によってとても有効だと思いますが、全国展開している大きな有名店にはそれができないんですね。 なぜなら自分達のネットショップが、自分達の既存店のお客様を奪ってしまうことになりかねないわけですから。 つまり各店舗の売上と従業員の生活を守るために、ネットショップに力を入れることができないんです。
なんとも皮肉な構図ですよね。
試しに有名な雑貨ショップのウェブサイトをご覧ください。 ネットで買えるのはごく一部の商品、しかもどう見ても主力とは思えないものが多いようです。 (前回の「在庫処分」を連想してしまいます)

既存店にとってネットショップは脅威でしょう。 それはそうですよ、賃貸料も内装費も光熱費もかけずにショップができるわけですからね。 ただでさえも請けの少ない雑貨屋という商売、しかもデフレで値段が押さえられている現状では非常に大きな脅威ですよ。 それがわかっているだけに、かえって手が出せないのではないかな。

では雑誌社はどうしてネットショップをもっと取り上げないのでしょうか? それはこれまでの既存店との付き合い上、既存店にとって脅威であるネットショップを、同じ紙上で取り上げるわけにはいかないのですよ。
ファッション雑誌で取り上げないのなら、PC関連の雑誌社が取り上げればよさそうなものですが、悲しいかなかれらにはネットショップをチョイスする「眼」がないのですよ。 iモードの雑誌ばかりあってもしょうがないと思うんですがね・・・

既存店、雑誌社どちらにとりましてもネットは今後必要不可欠ですし、プラスになることはわかっているにもかかわらず、私のように身軽に転換することができず、手探りで少しずつ、だれにも気が付かれないうちに(こっそりと)移行しようとしているのではないでしょうか。
あ、もちろん雑貨屋さんがなくなればいいと言っているのではありませんよ。 私も雑貨屋さんを見て歩くのは大好きですからね。

私はどこの雑誌社でもいいから、早くネットショップ専門の週間雑誌を出すべきだと思っています。 いまだにないのが不自然なんですよ。
みなさん検索サイトやモールから一生懸命に探していらっしゃいますよね? これが毎週雑誌でお薦めショップ、お薦め商品が紹介されていたらどうでしょう、ご覧になるのではないでしょうか? (発売までの時間差があるとしても)

すべての買い物情報を網羅していなくてもいいんです。 ようするに今あるファッション雑誌のウェブ専門版が欲しい、これからは絶対になくてはならないと言っているのですよ。 そう思いません?
「有名サイト5000店!」なんて電話帳みたいな雑誌は必要ないんです。 これまで既存店を紹介してきたように、おしゃれなネットショップを発掘したり、紹介したりすることがこれからの雑誌には必要なんです。
既存店は各店舗にウェブ担当を置き、ネットショップをも運営するのが一番いいのです。
まだまだ身近なところでおしゃれな雑貨や、インテリアが買えない人はたくさんいらっしゃいます。 そうしたお客様にも同じようにお買い物ができるように配慮していくべきでしょう。 私はそう思います。


来年には全国の主要都市での光ファイバーの整備が終わります。 ADSL、ケーブルといった高速通信も爆発的に普及が進み、ネット環境はますます快適に必要不可欠なものになっていき、2005年にはインターネットユーザーが9000万人になると推計されています。
もう今までと同じことをやっている場合ではないのですよ。